2024年11月1日金曜日
有意義な失敗
11月1日です。きのう、大谷翔平選手のドジャースがワールドシリーズを制し4年ぶり8度目のワールドチャンピオンに輝きました。
大谷選手にとってメジャー7年目の悲願達成です。
ワールドシリーズに出て勝つことを最優先に選んだ名門ドジャースへの移籍。そして、その1年目に鮮やかに決めた世界一です。
春先の通訳のトラブルや最終盤での左肩亜脱臼というアクシデントを乗り越えて叶えた夢の実現です。
さぞや感慨も一入のことでしょう。
▼ところで、ワールドシリーズを前にして大谷選手がインタビューに答えていた言葉に共感を覚えました。
曰く「勝てば何でもいい。打てなくても有意義なアウトならOK」という発言です。
勝利への執念と、それに向けた打撃結果への前向きな思いが伝わってきて印象に残りました。
▼「有意義なアウトならOK」つまり、「有意義な失敗ならOK」という姿勢は、スポーツに限らず、あらゆる分野で成功を追求する上での重要な教訓だと思います。
結果に対する執着と、それに至る過程での柔軟な考え方や適応力が、事を成功に導くカギになのでしょう。
失敗を単なる失敗ではなく、学びと成長の機会として捉える姿勢が大切なのだと思います。
▼話し方の訓練においても、「有意義な失敗ならOK」という姿勢がとても大切です。
失敗を通じて自分の話し方や表現方法に対する改善点に気づくことができます。失敗を受け入れることでプレッシャーが軽減し自信が培われます。
また、失敗を恐れずに新しいことを試すことで自分の最適なスタイルを見つけることができます。
▼例えば、大勢の前で話す際に緊張してうまく言葉が出てこなかったことがあったとしても、それを振り返り対処する方法を工夫することで、
本番のプレゼンやスピーチで冷静に対応できるようになります。
「有意義な失敗ならOK]という姿勢を持ち続けることで、話し方のスキルが向上し効果的なコミュニケーションを図れるようになるのです。
▼あなたは今、何か達成したい目標に向かって取り組んでいることがありますか?
大谷選手のワールドシリーズ制覇を機に、大谷選手の姿勢から得られる教訓について反芻してみるのもいいかもしれません。
2024年10月1日火曜日
3か月という期間
10月です。今年もあと3か月です。たかが3か月、されど3か月です。
この3か月という期間は、何かを学ぶ際に非常に有効だと言われています。
確かに、数多ある塾や講座のうち3か月でひとつのステップを終了するものが多いように思います。
▼3か月の学習期間が有効なのは、まず、短すぎず長すぎないため集中力を維持しやすいこと、
また、努力が成果として現れやすく達成感を得やすいこと、そして、モチベーションを維持しやすく次のステップに進みやすいこと、
さらに、3か月ごとに目標を設定し進捗を確認することで長期目標を達成しやすくなること、などが言われています。
▼ところで、NHKのEテレで明日2日から「3か月でマスターするピアノ」という番組が始まります。
4月からの「世界史」、7月からの「数学」に続く「3か月でマスターする」シリーズの第3弾です。
今回の「ピアノ」は、オトナだからこそ理屈を頭で理解し課題をひとつひとつクリアすることで、「3か月で課題曲を弾けるようになる」ことを目指すと言います。
▼実は、私事ながら70歳を機に認知症の予防になればとピアノの練習を始めました。70の手習いでした。
「大人のためのピアノ悠々塾」という教則本と添付のCDを頼りに76歳の今日も”年寄りのリハビリよろしく”ほぼ毎日ピアノに向かっています。
そんな矢先のNHKの番組です。さっそくテキストを買い求めました。心機一転、新たな挑戦をしてみようとて思っているところです。
▼何か新しい挑戦をする際には、3か月をひとつの区切りとして計画を立ててみるのがいいかもしれません。
話し方も、3か月あればスキルをかなり向上させることができます。
基本的な発声練習、活舌の訓練、スピーチやプレゼンテーションの実践練習など、ステップを踏んで続けることで話し方が確実に上達するはずです。
話し方教室などに参加して受講生同士が切磋琢磨することも非常に効果的だと考えます。
▼あなたは、何か具体的に学びたいことがありますか?いよいよ年末まであと3か月、目標に向かって頑張ってみましょう!
2024年9月1日日曜日
息遣いを考える
9月です。今日から初秋の富山の風物詩「おわら風の盆」が行なわれます。
折しも、台風10号は紀伊半島付近にあり、今後北上して今夜には熱帯低気圧になる見込みだといいます。
二百十日の風封じと五穀豊穣を祈る伝統行事「おわら風の盆」が、大禍なく行われることを祈るばかりです。
▼ところで、おわら風の盆で歌われる越中おわら節は、息遣いのとても難しい民謡です。
キーが高く息の長いことから日本の民謡の中でも屈指の難曲とされています。
かつて民謡大会の司会をしていたことがあります。越中おわらの一節一節を一息で歌い上げる出場者の息遣いに感心したものです。
▼先日、NHKの「チコちゃんに叱られる!」で息遣いのことを取り上げていました。
私たちは、1時間に900回、1日に2万1600回も息(呼吸)をしているのだそうです。
そこで、問題は「なぜひっきりなしに息をするの?」ということでした。チコちゃんの答えは「酸素が毒だから」でした。
▼私たちは、息を吸うことによって酸素を肺に送り込み、血管を通して全身の細胞に送っています。しかし、酸素は物を酸化させる毒でもあるというのです。
そもそも、太古の生物にとって酸素は猛毒だった。そこで、体内に溜めておけない。よって、絶えず息をするように進化した。という訳です。
▼番組では、呼吸のメカニズムに詳しい医学博士の根来秀行さんが、問題を解説した後、独自に考案した呼吸法を紹介していました。
称して「4・4・8呼吸法」。緊張をほぐし身体能力を向上させるのに最適な呼吸法だというのです。
メジャーリーガーやオリンピック選手にも伝授し成果をあげているということでした。
▼要領は、①楽な姿勢で座る、②息を吐き切る、③4秒かけて息を吸う、④4秒間息を止める、⑤8秒かけて息をゆっくり吐くこと、です。
そして、肝心なのは、息をゆっくり吸って長く吐くこと、鼻呼吸で腹式呼吸をすることだということでした。
▼ここで言う腹式呼吸とは、息を吸った時にお腹を膨らませ、息を吐く時にお腹をへこませる呼吸法です。
越中おわら節の名手も、腹式呼吸を意識し、長く吐く息に自慢の声を乗せる息遣いを心掛けていることでしょう。
話し方においても腹式呼吸による息遣いが大切です。通る声で、明るく、歯切れよく話すには、「4・4・8呼吸法」が有効だと思いました。
2024年8月1日木曜日
メンタルもテクニック
8月です。パリ五輪が開催中です。連日の日本選手の活躍に歓喜しつつ、彼らのプレッシャーたるや如何ばかりかと想像しています。
特別な舞台で期待通りのパフォーマンスを見せることの難しさと彼らのメンタルコントロールの苦心を思うのです。
▼先月、NHKのEテレの番組で車いすテニスプレーヤー国枝慎吾さんが話していた「メンタルもテクニック」という言葉が思い出されます。
国枝さんによれば、メンタルが強いとか弱いとか言うが、メンタルはもともと備わっているものではなく、「メンタルもテクニック」なのだそうです。
つまり、工夫次第でメンタルは強くできるという訳です。
▼国枝慎吾さんは、9歳の時に骨髄ガンを発症し両足の自由を失いました。入院した病室で天井を見ながら「なんで俺だけ?」と泣いたと言います。
そんな彼にとって、車いすテニスとの出会いがその後の人生を変えるのです。
番組では、障害を乗り越え前人未踏の記録を打ち立ててきた国枝さんならではの「メンタルを鍛えるテクニック」が紹介されていました。
▼国枝さんは、ラケットに「オレは最強だ!」と書いたシールを貼っているそうです。
きっかけは、師事したメンタルトレーナーに「世界一になるにはどうしたらいいか」と尋ねた際、
「世界一になりたい」ではなく、「世界一なんだ」と断言することから始めましょう、と言われたことだと振り返っていました。
▼サーブする時、ダブルフォルト(サーブを2回続けて失敗すること)するかもしれないと思っていると、高い確率でダブルフォルトしてしまう。
そんな時、間を取って「オレは最強だ!」のシールを見て口に出してみる。すると、ショットの成功率があがる。と言うのです。
朝起きて「オレは最強だ!」、練習でも「オレは最強だ!」と、自分自身に言い聞かせてきたと話していました。
つまり、絶対の自信が何より大切だという訳です。
▼その他にも、緊張は五感が研ぎ澄まされているサイン。緊張は試合の準備ができているサイン。つまり、準備万端だからこそ緊張するのだという訳です。
また、間をルーティンで埋める。例えば、サーブの前に2回、セカンドサーブの時は4回、ボールを地面につく。ルーティンは雑念を取り払うのに有効。
などなど、メンタルを鍛える独自のテクニックを説明していました。
▼話し方でも「上がらないで話す」ことは永遠のテーマです。
緊張のあまり、声が震えたり頭の中が真っ白になって言いたいことが十分に言えなかったりすることがあります。
国枝慎吾さんの「メンタルもテクニック」に倣い、
絶対の自信を得るための周到な準備、緊張を取り払うためのルーティンの工夫など、自分なりに腐心してみたいものです。
2024年7月1日月曜日
毎日の発声訓練の薦め
7月です。梅雨真っ只中、うっとしい日々が続いています。こんな季節だからこそ、すっきりした気分で心地よく一日を踏み出したいものです。
先日、俳優の仲代達矢さんがNHKラジオの早朝の番組で「毎日のラジオ体操とともに、毎日の発声訓練を続けましょう」と呼びかけていました。
▼仲代さん曰く「ふだん何気なく声を出しているが、発声に少し気をつけて簡単なポイントを意識するだけで、健康によく立派なエクササイズになると言われる。
そして、何より腹から声を出すというのはとても気持のいいものだ」。という訳で、仲代さんお薦めの発声訓練を紹介していました。
▼仲代さんが発声を大事に考えているのは、舞台の役者は楽器だと思っているからだそうです。
「一番高い音、一番低い音、その間の中音と、いろんな音を出せなくなったら演劇はできない。また、劇場という広い空間で演じるという意味でも声は非常に重要で、
舞台に近いかぶりつきのお客様にも、舞台から遠い2階席や3階席のお客様にも台詞がはっきりと聞こえなければならない。
そのために声を使い分ける。それがプロの技なのだ」。と話していました。
▼仲代さんの発声訓練は以下の要領です。まず、背筋を伸ばし腕は楽に力を抜いて、腹式呼吸で「あいうえお、かきくけこ、…」。
次に、思いっきり笑ってみる。笑うだけ、ただ笑うだけです。まず最初は中音で「はっはっはっ…」、ちょっと高音で「はっはっはっ…」、
さらに高音で「はっはっはっ…」、そして卑屈な笑いで「ひぃっひぃっひぃっ…」。これを何回か繰り返す。ポイントは楽しむことだそうです。
▼仲代さんと言えば、若手俳優のための演劇塾”無名塾”を自宅の稽古場で始めた主宰者として知られています。
無名塾は、自己表現を徹底的に追求し演劇の力を最大限に引き出す場として夙に有名です。
仲代さんは、91歳になった今日も孫ほどに歳の離れた若者たちと毎日の発声訓練を続けているということでした。
▼鞍田朝夫「話し方教室」でも、平成22年の開講以来、話し方向上の一環として発声練習や滑舌練習を出席した受講生全員で行なっています。
話し方で大切なことは、声の出し方、言葉の選び方、話の組み立て方だと考えます。
話した言葉は、書いた言葉のように何度も読み返すことができません。
だからこそ、話をしっかり聞き手に伝えるために日々の発声練習と滑舌練習が話し方の基本のキなのだと思います。
2024年6月1日土曜日
改めて「聞く力」を読み返す
6月です。雨の季節です。晴耕雨読を決め込んで、日がな一日読書にふけるのも一興かもしれません。
▼阿川佐和子さんの平成24年刊行のベストセラー「聞く力」を改めて読み返してみました。
と言うのは、話題の近著「話す力」の出版理由が、「聞く力」の読者から意外にも「話の切り出し方の参考になった」という声が多く、
ならば、「話す」をテーマにまとめてみようということになった次第、ということだったからです。
▼件の「聞く力」は、インタビュアーとして多くの人達の話を聞いてきた阿川さんが、
その経験に基づいて話を聞くことについての様々な要諦をまとめたものです。
そこには、インタビュアーだけでなく、私達の日常会話やビジネスシーンなどで役に立つ
「聞く力」をつけるためのヒントが、具体的なエピソードを通じて多く示唆されています。
▼阿川さん曰く、「聞く」という作業は、何も私のように生業にしなくとも、誰もが一日に何度となく、
まるで呼吸をするごとく、自然に行なっていることだと思います。
道を聞く、値段を聞く、講義を聞く、お喋りを聞く、愚痴を聞く、自慢話を聞く、いい加減に聞く、熱心に聞く、迷惑そうに聞く…。
▼阿川さんの「聞く力」を改めて精読し、“聞くは話すことの追求なり”の感を強くしました。
聞き上手とは? 聞く醍醐味とは? 話しやすい聞き方とは?
阿川さんがインタビューを通じて教訓を得たエピソードの数々は、聞くことに試行錯誤しながら確信した話し方の奥義なのだろうと感じました。
▼鞍田朝夫「話し方教室」では、スピーチの実践練習の際に、参加した受講生全員に聞いた感想を短くコメントしてもらっています。
他の受講生のスピーチを聞くことで学ぶべきことがたくさんあるはずです。
人の話し方、身のこなし、息遣い、話しの内容、話の展開の仕方、等々倣うべきことが数多あるはずです。
人の話しを聞いて感想をコメントすることは、人の話を咀嚼し自分の言葉で自分を表現することです。
まさに、自らの話し方を磨くことに他ならないと考えます。
2024年5月1日水曜日
阿川さんの「話す力」に学ぶ
5月です。近所の桜はすでに葉桜です。日に日に新緑が濃くなっていきます。
生気みなぎる季節です。踏み出した新年度に芽吹きの風を見つけたいものです。
▼阿川佐和子さんの近著「話す力」を読みました。
阿川さんといえば、平成24年刊行の「聞く力」が累計320万部の大ベストセラーだそうです。
今も売れているといいます。そこで、関連の第2弾出版ということに相成ったようです。
▼冒頭、「話す力」出版に至った理由が「ちょっと長めのまえがき」と題して紹介されています。
件の「聞く力」は、意外にも「話の切り出し方の参考になった」という読者の声が多かったそうです。
ならば、「話す」をテーマにまとめてみようということになった次第、とありました。
▼阿川さん曰く、「話す」と「喋る」は少し違うかもしれない。
そして、日本人は概して「話す」より「喋る」ほうが得意なのではないか。
だが、気心の知れた友達とお喋りするのが上手で才能豊かでも、大勢の前で「話す」のが得意という人はさほど多くない。
▼日本人はスピーチ下手なのかもしれない。阿川さんは米国でそれを確信する経験をしたといいます。
米国では、保育園の子供たちが自分の宝物を皆にお披露目する日直制度があり、幼い時から自分の言葉でスピーチする能力を磨いている。
大学では「ディベート」という授業があり、ひとつのテーマについて二班に分かれて冷静に論戦を交わす訓練をしている。
▼一方、日本人は、自分の意見を言う時にも相手の気持を忖度する傾向があり、率先して自分の意見を言うより周りに迎合してしまう。
でも、それも日本人の文化だとすれば、日本人だからこその話の切り出し方の小さな糸口があるような気がする。
ならば、どんな方法があるのか。件の「話す力」には、阿川さんの豊富な経験と広い人脈から得たヒントが数々紹介されています。
▼鞍田朝夫「話し方教室」では、平成22年の開講以来、
日常的な小人数の会話ではなく、人前でしっかりメッセージを発信する為の「話す力」をつけることを教室の目標にしてきました。
受講生から「何を話すか」悩むという声を多く聞きます。
阿川さんの「話す力」に、学ぶべき示唆があるように思います。思わぬ芽吹きの風を見つけることができるかもしれません。
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