2024年4月1日月曜日
人間味を出して、新年度へ
4月です。新年度を心新たに踏み出す人も多いことと思います。
今月から担当番組が変わるアナウンサーも特別な思いで新年度を迎えていることでしょう。
「NHKニュース7」の新キャスター糸井羊司アナのコメントに共感しました。
▼糸井アナは、歴代の「ニュース7」のキャスターの中では最年長の担当だそうです。
「よってフレッシュさは皆無です。にもかかわらず”なぜ私?”と考えた時、
ニュースに『これまで以上に人間味を出していきましょう』ということなのではないかと受け止めています。
人が伝える血の通った話し言葉でニュースをお伝えしていきたい」と、担当に当っての心境と抱負を語っていました。
▼”アナウンサーの仕事は、ニュースに始まってニュースに終わる”と言われます。
アナウンスメントの基本はニュースをしっかり伝えることであり、奥が深く極めることがとても難しいことでもあるという意味です。
AIによる自動音声でニュースが伝えられる今日この頃です。だからこそ”人が伝える、人間味の出る伝え方”が求められるのでしょう。
▼人前でするスピーチも同じです。人間味あふれる話し方が人の心を打つのです。
毎月第1と第3日曜日の午前10時から12時まで富山県民会館で開講している鞍田朝夫「話し方教室が、
受講生にとって、互いに切磋琢磨し共に人間味を磨き合う良い機会になれば幸いです。
▼以下、令和6年度の学習テーマと開催日程をご案内しておきます。
◎4月7日…明るい声で話す ◎4月21日…歯切れよく話す ◎5月5日…上がらないで話す ◎5月19日…話しかけるように話す
◎6月2日…簡潔に話す ◎6月16日…具体例で話す ◎7月7日…ひとつだけを話す ◎7月21日…間を取って話す
◎8月4日…3分間で話す ◎8月18日…口癖を直して話す ◎9月1日…初めてのスピーチで話す ◎9月15日…突然指名されて話す
◎10月6日…話材を整理して話す ◎10月20日…話し読み練習法で話す ◎11月3日…短いセンテンスで話す ◎11月17日…わかりやすい表現で話す
◎12月1日…正しい敬語で話す ◎12月15日…絵を描くように話す ◎1月12日ネタを集めて話す ◎1月19日…エピソードで話す
◎2月9日…三段階話法で話す ◎2月16日…起承転結で話す ◎3月2日…いい切り出しと結びで話す ◎3月16日…筋道を立てて話す
※なお、令和7年1月と2月は、第2と第3日曜日に開催します。
2024年3月1日金曜日
成長の実感を楽しむ
3月です。先日、NHKテレビの土曜スタジオパークを見ていて、吉高由里子さんの俳優としての姿勢に感心しました。
吉高さんは、放送中の大河ドラマ「光る君へ」で主人公”まひろ”(後の紫式部)を演じています。
「光る君へ」は、平安時代の世界最古の女性文学と言われる源氏物語を著した紫式部の物語です。
▼番組では、主人公”まひろ”を演じている心境は?と問われて、
「今、私、人生で一番習い事をしている感じ」と、充実感いっぱいの笑顔でした。
書や琵琶、乗馬、舞いなど、平安時代の所作そのままに俳優として求められる難しい演技を、
習い事に勤しむ一隅の機会と捉えて楽しく努力しているのでしょう。
▼とりわけ、左利きの吉高さんが右手で筆文字を書いていることについて、大変ですか?と問われ、
「大人になってから、自分が成長しているのを実感することがない。すーと細い線で書けると、成長している自分を実感できて楽しい」と、
努力の手応えを励みにしている様子でした。
▼利き手を変えることは、言うほど簡単なことではないと思います。幼い時ならいざ知らず、大人になってから利き手を変えるのは厄介なことだと察します。
それだけに、吉高さんの苦労が偲ばれます。そして、”成長の実感を楽しむ”という吉高さんの姿勢に感服しました。
▼ところで、利き手を変えることと日本語のアクセントを習得することには通底する要素があるように思います。
生来の性質を変えるという意味で似ているように思うのです。
日本語は音の高低でアクセントをつけます。音感がとても大切です。そして、生来の土地で身についた音感を標準語音感に変えるのはそう簡単ではないのです。
▼私の「話し方教室」に、標準語アクセントをマスターしたいと励んでいる受講生がいます。きれいな日本語を話すことを目標にしていると言います。
課題として、つねにアクセントを意識して話すこと、滑舌練習やアクセント練習を文意や情景を頭に浮かべながら
正しいアクセントで繰り返し行うことを勧めています。
努力の先に、吉高さんのような”成長の実感を楽しむ”日々がきっと訪れることと思います。
2024年2月1日木曜日
変わる努力、変える努力
2月です。3日が節分、4日が立春です。確かな春にはまだ程遠い日々ですが、暦の春です。
春は、新たに踏み出す季節です。そのために、変わる努力、変える努力に一念発起してみる季節かもしれません。
▼きょう1日は、ほとんどのプロ野球チームがキャンプインする日です。
かつて、阪神タイガースの春キャンプを取材したことがあります。高知県安芸市のタイガータウンで行なわれていた時代です。
今シーズンこそは!と、変わることに、変えることに汗する選手の姿に、新米の実況アナとして大いに触発されたものです。
今年も「アレ」をめざして、阪神タイガース、沖縄でキャンプインです。
▼変わる、変える、と言えば、NHKの元アナウンサー松平定知さんが「ラジオ深夜便」に出演し、
ニュースの文体を変えるべく腐心していた頃のことを話していました。
1974年(昭和49年)、外信部記者だった磯村尚徳さんをキャスターにNC9が登場し、記者が自分の言葉でしゃべるニュースが話題になります。
そして、記者の書いた原稿を正しい発音できれいに読むだけのアナウンサーの読みニュースが批判にさらされ変化を求められます。
そんな頃の苦労話でした。
▼松平さんは、文体を変えるべき典型として、
例えば「来年の春に開通が予定されている本州四国連絡橋の瀬戸大橋ルートの岡山県側の玄関口・倉敷児島で工事が行なわれていた
世界で初めての2つのメガネを重ねたような4つのトンネルが一緒になった鷲羽山トンネルが、着工以来6年ぶりにきょう開通しました。」という原稿を示し、
▼主語は鷲羽山トンネル、それを説明するのに気の遠くなるほどの修飾がある。
これを「鷲羽山トンネルがきょう開通しました。着工以来6年ぶりのことです。この鷲羽山トンネルは・・・」という情報展開をしたら誰でもわかる。
つまり、”センテンスを短く”することが大事な要素のひとつだと強調していました。
▼ほぼ同時期に現役アナだった身として、その通り!と膝打つ話しでした。
鞍田朝夫「話し方教室」でも、“センテンスを短く”話すことを重要な学習テーマとして取り上げ、受講生に取り組んでもらっています。
”話す力”つけるために集う受講生にとって、変わる努力、変える努力に切磋琢磨する場となっていれば幸いです。
2024年1月1日月曜日
人生は邂逅
新年です。年の初めに過ぎた歳月やこの先の日々を思う時、つくづく”人生は邂逅”の感を強くします。
人との出逢いや機会との巡り逢いが人生に綾をなす不可思議をしみじみ思うのです。
米大リーグの大谷翔平選手にも様々な人生の邂逅があったことでしょう。
▼昨年末電撃移籍したドジャースは、実は高校時代からの憧れの球団でした。
花巻東高校時代に最初に関心を示してくれたのがドジャースのスカウトだったそうです。それがメジャー挑戦を意識するきっかけになったといいます。
その後、ドジャースが正式に獲得の意思を示し、大谷選手もアメリカに渡る決意を固めていたのでした。
▼そんな大谷選手をドラフトで強硬指名したのが北海道・日本ハムでした。そして、説得に乗り出したのが栗山英樹監督でした。
夢のメジャーに行く前に日本でやるべきことがあることを説き「新しい道つくろうぜ」と語りかけたといいます。新しい道とは二刀流への挑戦のことです。
”二刀流の大谷”の原点は、栗山監督が指揮する日本ハムとの邂逅にあったと言えます。
▼その日本ハムからメジャー移籍を目指した2017年も、ドジャースが熱心だったといいます。
しかし、当時、ナ・リーグに指名打者(DH)制がなく、大谷選手はDH制のあるエンゼルスを選ぶのです。
その後、右肘や左膝の手術を受け、大谷選手の二刀流に懐疑的な見方が広がる中、信じてくれたのがエンゼルスでした。
今日の”二刀流開花”の端緒は、エンゼルス入団を選択したことにあるのです。
▼そして、大谷選手の今年は、母親が日本人で沖縄生まれの監督と1度目の手術の執刀医がチームドクターという新たな邂逅のもと、
かつて、野茂英雄投手が「トルネード投法」でメジャー進出の扉を開いたゆかりの球団で、
去年3月のWBCで火がついた「今は、勝つことが一番」という熱情でワールドシリーズ制覇を狙うことになるのです。
▼さて、鞍田朝夫「話し方教室」は、今年も富山県民会館で従来通り開講することにしています。
「話す力」をつけるために集う受講生にとって、互いに切磋琢磨するささやかな邂逅の機会になれば幸いです。
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