2013年12月1日日曜日

「~をする」という言い方


第185回臨時国会が大詰めです。国会の論戦を聞いていると、
「~をする」という言い方をする議員のあまりの多さに、”如何な
ものか”という強い違和感を覚えます。例えば、質問にお答えを
する、考えをお聞きをする、総理にお訴えをする、議案を可決を
する、対策を検討をする、会議を開催をする、対案を提出をする、
不安を払拭をする、などなど枚挙に遑がありません。
日本語・フランス語教師の野口恵子さんは、著書「バカ丁寧化
する日本語」の中で、多くの政治家が、「を」を入れる言い方を
改まった言葉づかいだと思って、「日本語を勉強をする」式の、
おかしな日本語を話している。必要のない「を」を入れるのは、
結果的に間違っていると書いています。
野口さんによれば、改まった言葉遣いでは、略語を多用しない
など、省略することを控えようとする傾向があると言います。
例えば、くだけた会話では、「アカデミー賞とった映画見た?」の
ように、助詞の「を」は、よく省略されるが、改まった言葉づかい
をする時は、「アカデミー賞をとった映画を見ましたか」のように、
「を」を省略しない。よって多くの政治家は、改まった言葉づかい
をするときは「を」を省略しない、敬語は改まった言葉づかいだ、
ゆえに敬語で話すときは「を」を入れる、という結論を導き出した
のか、せっせと「を」入れているのだろうと言うのです。
野口さんは、この「を」入れる言い方は過剰敬語の範疇であり、
何事も「過ぎたるは及ばざるが如し」、過剰になると品を失う、
慇懃すぎるとかえって失礼になる、と言っています。同感です。
野口さんはまた、この「を」を入れる言い方は、政治家に限らず、
今や、サービス業の告知コメントや放送のアナウンサーにまで
蔓延し、広く一般にも使われている。その意味では、やがて、
21世紀の敬語として定着していくのかもしれない、いやすでに、
そうなってしまっているのかもしれない、と嘆いています。確かに、
残念ながらそうかもしれません。しかし、間違いは間違いです。
「お待たせをいたしました」「お願いをいたします」など、何気なく
日頃使ってしまう「を入れ」表現には注意したいものです。
鞍田朝夫「話し方教室」、12月は「正しい敬語で話す」「絵を描く
ように話す」を学習テーマに開講します。きょう1日と15日の午前
10時から富山県民会館608号室で開きます。
関心のある方は、ぜひ覗いてみてください。お待ちしています。