2024年3月1日金曜日
成長の実感を楽しむ
3月です。先日、NHKテレビの土曜スタジオパークを見ていて、吉高由里子さんの俳優としての姿勢に感心しました。
吉高さんは、放送中の大河ドラマ「光る君へ」で主人公”まひろ”(後の紫式部)を演じています。
「光る君へ」は、平安時代の世界最古の女性文学と言われる源氏物語を著した紫式部の物語です。
▼番組では、主人公”まひろ”を演じている心境は?と問われて、
「今、私、人生で一番習い事をしている感じ」と、充実感いっぱいの笑顔でした。
書や琵琶、乗馬、舞いなど、平安時代の所作そのままに俳優として求められる難しい演技を、
習い事に勤しむ一隅の機会と捉えて楽しく努力しているのでしょう。
▼とりわけ、左利きの吉高さんが右手で筆文字を書いていることについて、大変ですか?と問われ、
「大人になってから、自分が成長しているのを実感することがない。すーと細い線で書けると、成長している自分を実感できて楽しい」と、
努力の手応えを励みにしている様子でした。
▼利き手を変えることは、言うほど簡単なことではないと思います。幼い時ならいざ知らず、大人になってから利き手を変えるのは厄介なことだと察します。
それだけに、吉高さんの苦労が偲ばれます。そして、”成長の実感を楽しむ”という吉高さんの姿勢に感服しました。
▼ところで、利き手を変えることと日本語のアクセントを習得することには通底する要素があるように思います。
生来の性質を変えるという意味で似ているように思うのです。
日本語は音の高低でアクセントをつけます。音感がとても大切です。そして、生来の土地で身についた音感を標準語音感に変えるのはそう簡単ではないのです。
▼私の「話し方教室」に、標準語アクセントをマスターしたいと励んでいる受講生がいます。きれいな日本語を話すことを目標にしていると言います。
課題として、つねにアクセントを意識して話すこと、滑舌練習やアクセント練習を文意や情景を頭に浮かべながら
正しいアクセントで繰り返し行うことを勧めています。
努力の先に、吉高さんのような”成長の実感を楽しむ”日々がきっと訪れることと思います。
2024年2月1日木曜日
変わる努力、変える努力
2月です。3日が節分、4日が立春です。確かな春にはまだ程遠い日々ですが、暦の春です。
春は、新たに踏み出す季節です。そのために、変わる努力、変える努力に一念発起してみる季節かもしれません。
▼きょう1日は、ほとんどのプロ野球チームがキャンプインする日です。
かつて、阪神タイガースの春キャンプを取材したことがあります。高知県安芸市のタイガータウンで行なわれていた時代です。
今シーズンこそは!と、変わることに、変えることに汗する選手の姿に、新米の実況アナとして大いに触発されたものです。
今年も「アレ」をめざして、阪神タイガース、沖縄でキャンプインです。
▼変わる、変える、と言えば、NHKの元アナウンサー松平定知さんが「ラジオ深夜便」に出演し、
ニュースの文体を変えるべく腐心していた頃のことを話していました。
1974年(昭和49年)、外信部記者だった磯村尚徳さんをキャスターにNC9が登場し、記者が自分の言葉でしゃべるニュースが話題になります。
そして、記者の書いた原稿を正しい発音できれいに読むだけのアナウンサーの読みニュースが批判にさらされ変化を求められます。
そんな頃の苦労話でした。
▼松平さんは、文体を変えるべき典型として、
例えば「来年の春に開通が予定されている本州四国連絡橋の瀬戸大橋ルートの岡山県側の玄関口・倉敷児島で工事が行なわれていた
世界で初めての2つのメガネを重ねたような4つのトンネルが一緒になった鷲羽山トンネルが、着工以来6年ぶりにきょう開通しました。」という原稿を示し、
▼主語は鷲羽山トンネル、それを説明するのに気の遠くなるほどの修飾がある。
これを「鷲羽山トンネルがきょう開通しました。着工以来6年ぶりのことです。この鷲羽山トンネルは・・・」という情報展開をしたら誰でもわかる。
つまり、”センテンスを短く”することが大事な要素のひとつだと強調していました。
▼ほぼ同時期に現役アナだった身として、その通り!と膝打つ話しでした。
鞍田朝夫「話し方教室」でも、“センテンスを短く”話すことを重要な学習テーマとして取り上げ、受講生に取り組んでもらっています。
”話す力”つけるために集う受講生にとって、変わる努力、変える努力に切磋琢磨する場となっていれば幸いです。
2024年1月1日月曜日
人生は邂逅
新年です。年の初めに過ぎた歳月やこの先の日々を思う時、つくづく”人生は邂逅”の感を強くします。
人との出逢いや機会との巡り逢いが人生に綾をなす不可思議をしみじみ思うのです。
米大リーグの大谷翔平選手にも様々な人生の邂逅があったことでしょう。
▼昨年末電撃移籍したドジャースは、実は高校時代からの憧れの球団でした。
花巻東高校時代に最初に関心を示してくれたのがドジャースのスカウトだったそうです。それがメジャー挑戦を意識するきっかけになったといいます。
その後、ドジャースが正式に獲得の意思を示し、大谷選手もアメリカに渡る決意を固めていたのでした。
▼そんな大谷選手をドラフトで強硬指名したのが北海道・日本ハムでした。そして、説得に乗り出したのが栗山英樹監督でした。
夢のメジャーに行く前に日本でやるべきことがあることを説き「新しい道つくろうぜ」と語りかけたといいます。新しい道とは二刀流への挑戦のことです。
”二刀流の大谷”の原点は、栗山監督が指揮する日本ハムとの邂逅にあったと言えます。
▼その日本ハムからメジャー移籍を目指した2017年も、ドジャースが熱心だったといいます。
しかし、当時、ナ・リーグに指名打者(DH)制がなく、大谷選手はDH制のあるエンゼルスを選ぶのです。
その後、右肘や左膝の手術を受け、大谷選手の二刀流に懐疑的な見方が広がる中、信じてくれたのがエンゼルスでした。
今日の”二刀流開花”の端緒は、エンゼルス入団を選択したことにあるのです。
▼そして、大谷選手の今年は、母親が日本人で沖縄生まれの監督と1度目の手術の執刀医がチームドクターという新たな邂逅のもと、
かつて、野茂英雄投手が「トルネード投法」でメジャー進出の扉を開いたゆかりの球団で、
去年3月のWBCで火がついた「今は、勝つことが一番」という熱情でワールドシリーズ制覇を狙うことになるのです。
▼さて、鞍田朝夫「話し方教室」は、今年も富山県民会館で従来通り開講することにしています。
「話す力」をつけるために集う受講生にとって、互いに切磋琢磨するささやかな邂逅の機会になれば幸いです。
2023年12月1日金曜日
考えが人間を創る
12月です。先日、NHKのBS放送で「マーガレット・サッチャー 鉄の女の涙」という映画を観ました。
イギリス初の女性首相になったサッチャーの半生を描いた映画です。
強硬な政治手腕で「鉄の女」と呼ばれつつも、妻や母としての顔もあり、知られざる孤独と苦悩があったという物語です。
2012年に公開された映画のテレビ放送でした。
▼メリル・ストリープ演ずるサッチャーのセリフで印象に残った言葉がありました。
曰く「考えが言葉になる。その言葉が行動になる。その行動がやがて習慣になる。習慣がその人の人格になり、その人格がその人の運命になる。
考えが人間を創るのよ」・・・父の言葉だと言っていました。父から教わった人生訓なのでしょう。
▼サッチャーは、父の影響で政治家を志すようになったと言われています。
生家は小さな食料品店でした。保守党員だった父から様々な価値観を教わったようです。彼女の強い信念は父親譲りのものだったのかもしれません。
オックスフォード大学で保守党の学生支部に入会。ここで磨いた演説の上手さが決め手となり国会議員に。そして、女性初の保守党党首、首相への上り詰めるのです。
▼「人間は考える葦である」という言葉があります。フランスの哲学者・パスカルの名言です。
曰く「人間は自然の中では葦のように弱い存在である。しかし、人間は考えることができる。考えることこそ人間に与えられた偉大な力である」という訳です。
▼考えが人間を創る、人間は考える葦・・・日頃、何事につけても、いろいろな機会を捉えて、考え、それを言葉にすることを習慣にしたいものです。
▼さて、12月の鞍田朝夫「話し方教室」は、いつも通りの第1日曜日の3日と、いつもと違う第4日曜日の24日に開きます。
教室に関する問い合わせは、☎076-431-3248 か Eメールkurata2347@gmail.comへご連絡いただければ幸いです。
2023年11月1日水曜日
”深さ”と”浅さ”
11月です。いよいよ錦秋の候。各地の紅葉情報に秋の深まりを感じます。
秋は、空気や風景が徐々にそれらしくなっていくという意味で、深まるという言葉が最もふさわしい季節かもしれません。
次第に深まりゆく秋の”深さ”を日に日に実感する時季ではあります。
▼ところで、何事にも”深さ”と”浅さ”はあるものです。話にも”深さ”と”浅さ”があります。
「深い話」とはどのようなもので、話に”深さ”を出すにはどのような能力が必要なのか。
また、その能力をどう伸ばせばいいのかを詳しく解説した本があります。
▼明治大学教授の齋藤孝さんの”いつも「話が浅い」人、なぜか「話が深い」人”という本です。今年の2月に出版されました。
齋藤教授は、これまでに上梓した”声に出して読みたい日本語”や”語彙力こそが教養である”などの著書で知られる話し方の第一人者です。
件の本も、「あの人は深い」と言われる話し方、その真髄に迫る本です。
▼齋藤教授によれば、話に”深さ”を出すために必要なことは「展開力」と「本質把握力」、そして、「具体化力」の3つだということです。
展開力は、話が薄っぺらにならないだけの情報力と知識力を身につけ展開していく力。
本質把握力は、上っ面をなぞるだけの話にならないよう核心の部分をつかみ提示する力。
具体化力は、話が抽象的にならないための適切なエピソードを例示する力。だそうです。
▼さらに、齋藤教授は強調します。最終的に必要なのはアウトプットする能力。
どんなに教養や知識があり、深い本質を知っていて、様々な経験やエピソードを持っていたとしても、上手に話せなければ宝の持ち腐れ。
つねに、人に話す経験を積むこと。アウトプット能力は、実際に練習しないと上達はしない。けだし、話し方の権威の至言だと思います。
▼さて、11月の鞍田朝夫「話し方教室」は、5日と19日に開きます。富山県民会館608号室で午前10時から12まで開講します。
学習テーマは、5日が「話し読み練習法で話す」、19日が「筋道を立てて話す」です。入会を希望する方の事前見学を受け付けます。
予め、☎076-431-3248 か Eメールkurata2347@gmail.comへご連絡いただければ幸いです。
2023年10月1日日曜日
ようやく秋めいて、下期へ
10月です。記録的な8月の猛暑と9月の残暑が名残りを留めつつ、ようやく秋めいてきました。
確かに空気が変わったように感じます。気がつけば、刈り取りを終えた稲株が青々と芽(ひつじ)を出しています。
これからは、目に見えて季節の変化が感じられるようになることでしょう。
▼ところで、先日のNHKの番組「あさイチ」で、短歌づくりを特集していました。
ゲストの俵万智さんと一緒に短歌ライフを始めてみませんか?
日頃のトキメキやイライラも三十一文字にして人生を豊かに!
日常を短歌にするコツとは?…という内容でした。
▼いま、短歌づくりが日常を楽しむツールとして大人気なのだそうです。
番組よれば、短歌づくりのコツは、
①テーマを探す時、見た目、音、匂い、味など、同じ風景が違って見えた瞬間に注目すること。
②描写する時、物の具体的な名前や数字などで共感を得るようにすること。
③言葉を選ぶ時、心情をにじませるようにすること。…だそうです。
▼短歌づくりのコツは、スピーチを考える時にも通じる要領だと感じました。
秋のつれづれに「さて、一首」と、思いを巡らせてみるのも一興かもしれません。スピーチ力向上に繋がりそうです。
俵万智さん曰く「言葉は誰もが持っている。誰もが使っている。その時点では、みな同じスタートラインに立っている。」
とても示唆的な言葉でした。
▼さて、令和5年度の鞍田朝夫「話し方教室」は下期に入ります。以下、下期の学習テーマと日程をご案内しておきます。
◎10月1日…いい切り出しと結びで話す◎10月15日…突然指名されて話す
◎11月5日…話し読み練習法で話す◎11月19日…筋道を立てて話す
◎12月3日…5W1Hで話す◎12月24日…エピソードで話す
◎1月7日…正しい敬語で話す◎1月21日…起承転結で話す
◎2月4日…話材を整理して話す◎2月18…簡潔に話す
◎3月3日…三段階話法で話す◎3月17日…アイドマで話す
▼鞍田朝夫「話し方教室」は、原則、毎月、第1日曜日と第3日曜日の午前10時から12時まで富山県民会館で開きます。
ただし、12月の教室は、第1日曜日の3日と、いつもと違う第4日曜日の24日に開講します。
入会を検討される方の事前見学を受け付けます。予め、☎076-431-3248 かEメール kurata2347@gmail.com1へご連絡いただければ幸いです。
2023年9月1日金曜日
二刀流で思うこと
9月になりました。日米ともにプロ野球はいよいよ大詰めを迎えます。
そんな中、米大リーグの大谷翔平選手のケガの報は衝撃でした。右肘靭帯損傷。今シーズンの残り試合に投手として出場することはないということです。
二刀流として異次元の活躍をしてきただけにとても残念です。
▼ところで、二刀流とは?①両手に1本ずつの刀を持って戦う剣術の流派。宮本武蔵の二天一流が有名。
②酒も甘いものも両方が好きなこと。また、その人。両刀づかい。③二つの物事を同時にうまく行なえること。また、その人。
などと辞典や辞書には説明されています。
▼③に言う二刀流には、事をうまく行なうための二つの能力が求められます。少年野球や高校野球では投打の二刀流は珍しくありません。
しかし、プロの世界では専門性を追求することが良しとされ、二刀流の能力を試してみる門戸さえも充分に開かれていたとは言えません。
そんな中、野球少年そのままに、愉しく二刀流に挑み、日米で結果を見せつけ、本場の野球さえも変えてきたところに大谷選手の真骨頂があります。
▼大谷選手の二刀流は別格として、相対する二つの物事に対し、それを上手にこなすべく挑んでみるのは意義あることだと思います。
例えば、話し方における、読むことと話すこと。リーディングとスピーキングは別の能力です。
話すように自然に読めること、読むようにきちんと話せることは、意外と難しいなのです。だからこそ、訓練してみる価値があります。
▼話し方の勉強法のひとつに「話し読み練習法」があります。新聞や雑誌などの記事を話し言葉に直し、人に話すように読む練習法です。
繰り返し練習しているうちに話し方の基本が身につきます。
話すように読み、読むように話す訓練は、読んでよし、話してよし、言わば”二刀流の話し手”への確かな道程なのです。
▼さて、9月の鞍田朝夫「話し方教室」は、3日と17日に開きます。富山県民会館608号室で午前10時から12時まで開講します。
学習テーマは、3日が「3分間で話す」、17日が「初めてのスピーチで話す」です。入会を検討される方の事前見学を受け付けます。
予め、☎076-431-3248 か Eメールkurata2347@gmail.comへご連絡いただければ幸いです。
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