「新しき年の始めの初春の
今日降る雪のいや重け吉事」
万葉集4516首の最後を飾っている大伴家持の歌です。
今の鳥取県、因幡国の国守として赴任していた家持が、
天平宝字3年(759)の正月に詠んだ歌です。
新しい年の始めの今日、降っている雪のように、今年も
吉事(よごと)が重なりますように、というような大意です。
この歌は、雪国富山に生まれ、家持ゆかりの地で幼少
期を過ごした私にとって、特別の親近感と共感を持って
その年の幸せを祈念する年頭の呟きそのものです。
家持は、天平18年(746)から5年間、越中国の国守
として今の富山県高岡市伏木に在任しました。家持が
万葉集に残した473首の歌のうち半分近くの223首を
この5年間に詠んでいます。歌人として、最も意欲的で、
かつ充実した日々を過ごしたであろう地が、我が故郷で
あるというのは、とても誇らしい喜びです。
国庁跡の勝興寺や官舎跡の伏木測候所は、中学時代
の下校時の道草の場所でした。そして、家持が部下を
従え馬を走らせた渋谿の崎(雨晴海岸)は、夏休みの
日課として毎日のように友と遊んだ海水浴の場でした。
万葉の故地として、海越しの立山連峰を望む景勝地と
して、雨晴海岸一帯が国の名勝指定を目指して整備が
進められるようです。嬉しいニュースです。
「馬並めていざうち行かな渋谿の
清き磯廻に寄する波見に」
新しい年の始めに「吉事」が多い年であらんことを願い、
また、午年だけに疾走する馬に倣い「いざうち行かな」と
一年の計を誓う元旦です。
鞍田朝夫「話し方教室」、1月は、「ネタを集めて話す」と
「エピソードで話す」を学習テーマに、5日と19日の午前
10時から富山県民会館608号室で開きます。
関心のある方は、どうぞご見学ください。