2025年5月1日木曜日
方言の周圏論
5月です。先月から始まったNHKの朝ドラ「あんぱん」を見ていて思うことがあります。
登場する人たちの土佐弁が私たちの富山弁によく似ているということです。
語尾の響きや使い方にそっくりな表現がたくさんあります。
▼朝ドラ「あんぱん」は、”アンパンマン”を生み出した漫画家やなせたかしと妻の暢をモデルにした物語です。
ドラマ中、助詞の「が」がつく会話が頻繁に出てきます。昨日の放送でも「うちはいいがですけど」「それが解けんがか」「丸暗記してしまうがよ」
「どんな味がするがやろ」「この家と結婚したがか」「そうなが?」「もう決めたがよ」「大切な人がおるがやない?」という具合でした。
確かに、土佐弁と富山弁には類似性がありそうです。
▼一昨年放送された朝ドラ「らんまん」を見ていた時にも同じことを思いました。
「らんまん」は、高知県出身の植物学者・牧野富太郎の人生をモデルにした感動の物語でした。
この時も劇中に交わされた会話は、「が」の使い方が富山弁とよく似た土佐弁でした。
土佐弁と富山弁がどうして似ているのか?かねがね疑問でした。
▼腑に落ちる考え方に行きあたりました。方言の周圏論です。民俗学者・柳田国男が提唱した言語学の理論です。
言葉の変化は、文化の中心地(京都)から同心円状に広まって行くという考え方です。
東北弁と出雲弁の類似性も方言の周圏論の典型だと言います。確かに、どちらも「ズーズー弁」と呼ばれることがあり、とても似ています。
そう言えば、島根県出身の竹下元総理の話し方に東北訛りを感じたものでした。納得です。
▼ところで、松本清張の小説「砂の器」では、東北弁と出雲弁の類似性が重要なトリックに使われています。
物語の冒頭、東京で起きた殺人事件の被害者と犯人が「ズーズー弁」で話していたという証言から、警察は東北地方に捜査を広げます。
しかし、東北では手掛かりが得られず、やがてその方言が出雲地方のものであると判明するというストーリーです。
▼方言の周圏論は面白い考え方だと思います。納得の理論です。
富山弁と土佐弁は、ともに西日本方言の系統に属し、都(京都)から似たような距離に位置します。
遠く離れた富山と高知の方言の類似性は単なる偶然なのか?歴史的、言語的必然性が何かあるのか?
方言の謎が想像を駆り立てます。そして、朝ドラ「あんぱん」に特別な親近感を抱きつつ今朝も見るのです。
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